クリスマス・マーケット
 

クリスマス・マーケット

 町のイルミネーションが一斉に輝きはじめ、チロル中にクリスマス・ムードが高まり始めるころ、クリスマスには欠かすことができないクリスマス・マーケットが各地で開かれます。中でもアルプス地方最大の都市インスブルックで開かれるマーケットはチロル州の中でも最も人気が高く有名です。インスブルックでは毎年2箇所でクリスマス・マーケットが開かれ、1つは新市街の州庁舎広場、そしてもう1つは800年もの歴史を誇るインスブルックの旧市街です。

 子供から大人まで楽しめるこのクリスマス・イベントには毎年多くの人が訪れます。チロル各地から訪れる人を始め、中にはわざわざ遠いイタリア、フランス、スイスやドイツなどから足を運ぶ人もおり、インスブルックは一気に国際的な雰囲気に包まれます。美しいアルプスのふもとインスブルックの町で、これほどまでにクリスマス・マーケットが人気を呼ぶのは何故でしょうか。
 インスブルックのクリスマス・マーケットはアルプス地方のものとしては最大ですが、規模を比較してみるとヨーロッパ各都市のクリスマス・マーケットよりもやや小さめです。それでもインスブルックの町に毎年多くの人が訪れるのには理由があります。それは、チロルのクリスマス・マーケットではアルプスの素朴さ、温かさ、そして人々の親しみを感じることができ、何とも言えないロマンチックなクリスマスの雰囲気が漂っているからです。
 チロルの州都インスブルックでは11月末になりアドヴェント期間に入ると、町中の各道路に美しいイルミネーションがぎっしりと張り巡らされます。そしてインスブルック旧市街にあるシンボル「黄金の小屋根」の前には、巨大なクリスマスツリーが飾られ、その周りにクリスマス・マーケットの屋台が約50軒~60軒並びます。チロルの伝統的なお菓子や料理、クリスマス用のデコレーション、ぬいぐるみ、オモチャなど、可愛らしい小物が屋台で売られ、町行く人々は興味深く屋台の中を覗き込みます。クリスマス・マーケットは毎日午後の14時から夜の20時頃まで開かれおり、地元の人の集いの場として多くの人で賑わいを見せるのです。
 また、お昼から午後にかけては子供連れの家族のためのイベントが充実しています。毎日3回の人形劇やマジックショー、年配の方が子供たちにメルヘンを聞かせる場面などが見られ、子供たちはゲームやお絵書き、折り紙や仮面作りなどを楽しむことができ、クッキーの焼き方まで教えてもらうことができます。そして、これらプログラムは全て無料で、ドイツ語のみならずイタリア語やフランス語でも行われており、多くの子供が参加できるよう配慮されています。動物コーナーでは可愛らしいポニーやヤギにじかに触れることができ、小さくノスタルジックなメリーゴーランドなども子供たちを楽しませてくれます。もちろんピエロやサンタクロースも登場して子供たちを驚かせ、喜ばせています。クリスマス・マーケットでは子供から大人までクリスマスシーズンを楽しむことができ、温かくほのぼのとした光景が見られます。
 夕方になると、「黄金の小屋根」や「市の塔」などから突然ブラスバンドのグループが出現、伝統的なクリスマスソングの生演奏を始めます。美しい音色に人々を酔いしれ、ロマンチックな雰囲気を一層盛上げてくれます。夜になると仕事帰りの人や学生たちでクリスマス・マーケットはさらに賑わい、雰囲気も一転して「大人の交流の場」と化します。グリューワイン(薬草入りホットワイン)やヤーガーテー(薬草とアルコール入り紅茶)を飲みながら、歌を歌ったり、楽しい会話で盛り上がったり、可愛らしい屋台でクリスマスの品々を買う姿も見られます。キラキラと輝く数多くのクリスマス・デコレーション、暖かい手袋、セーター、靴下など、売られているほとんどの商品は手作りです。クリスマス・マーケットに屋台を出せる人は地元でも限られており、クリスマス・マーケットで少なくとも15年以上前から毎年店を出している人達が殆どです。そのため、一般のお店ではなかなか手に入れることのできない小物や手作りの品々が沢山あり、値段も比較的手ごろです。

 チロルのクリスマスシーズンは日本やアメリカとは一味違い、静かで家族的な温かさに包まれています。特にクリスマス・マーケットはほのぼのとした雰囲気があり、イエス・キリストの誕生を待ちわびる人々の喜びと愛が伝わってきます。