悪い子を正すクランプス
 

悪い子を正すクランプス

 12月5日、聖ニコラウス祭の前夜になると町のあちらこちらにクランプスと呼ばれる全身毛むくじゃらの西洋版ナマハゲが登場します。このクランプスという不気味な存在は、その恐ろしい風格ながらも、実は心優しい聖ニコラウスの付添い人で、悪い子を正す役割を持っています。

 異教の悪魔を信じていたヨーロッパの人々は、冬になると自ら悪魔の姿となり鈴や鐘を鳴らしながら悪魔を追い払おうとしたことから、亡霊の群を表すクランプスの伝統が生まれました。聖ニコラウスが訪れる12月6日頃は亡霊にまつわる行事が最も集中する時期です。そのため、いつのまにか亡霊が聖人の付添い人として考えられるようになったのです。亡霊たちはチロル全土に存在し、様々な名前で呼ばれています。例えばクラウブアウフ(Klaubauf)、トゥイフル(Tuifl)、ペアシュトゥ(Peascht)、メースルファク(Möslfack)、タクセンハッカー(Taxenhacker)などです。これら亡霊たちは「クランプス」という代表名で知られています。聖ニコラウスが各家庭に訪れ、良い子にプレゼントを配るという伝統は意外にも新しいもので、その際聖ニコラウスは付き添い人として天使とクランプスを連れ、悪い子への誡めにはクランプスが子供を叱る役割となったのです。

 クランプスは12月5日、聖ニコラウスがプレゼントを持って来てくれる日の前夜に現れ、夜遅くまで町を歩きまわっている「悪い」子供たちや大人たちに棒やホウキで襲いかかっては「良い子」になるように促します。迫力満点のクランプスは「悪い子」ではないかと疑った相手には、容赦なく誰にでも襲い掛かって来るため、中にはこの日はなるべく夜の外出を控える人や、女性はスカートを履かないようにする人などもいます。恐ろしいイメージを持つクランプスではありますが、チロルの人々にとってクランプスは聖ニコラウスの来訪を告げてくれる大切な存在です。町に賑わいをもたらすクランプスは、クリスマスシーズンならではの楽しい行事の一つなのです。