サンタクロース vs 聖ニコラウス
 

サンタクロース vs 聖ニコラウス
 12月になると誰もが楽しみに待ちわびるクリスマス・プレゼント。多くの場合、サンタクロースがクリスマスに煙突から入り、プレゼントを靴下の中に入れてくれると伝えられていますが、実は敬虔なキリスト教徒が多いチロルやヨーロッパ諸国では、プレゼントはサンタクロースからではなく、聖ニコラウスから、それも12月6日に贈られるのです。しかも、その中身はピーナッツやミカン、チョコレートやお菓子などといった簡単なものです。

 サンタクロースの風習はチロルではまだあまり広まっておらず、サンタクロースが知られるようになったのも20年程前からです。やはりチロルでは今なお1600年も続く聖ニコラウスの伝統が根強く残っているといえるでしょう。サンタクロースと聖ニコラウスはよく同じ人物と間違えられますが、実は全く違う人物なのです。では聖ニコラウスとは一体どのような人物だったのでしょうか?

 聖ニコラウスは、4世紀に小アジアの古代都市ミュラ(現在のトルコに位置する)のニコラス司教(270~310)のことで、後のサンタクロースのモデルとなった人物です。1071年、彼の遺骨がコンスタンチノープルから北イタリアのバリへ長距離にわたって運ばれたとき、聖ニコラウスにまつわる伝説は一気にヨーロッパ中に広まりました。
 数多くの伝説が残されている中でも2つの話が最も有名で、その内の1つは次の通りです。心優しいニコラウス司教がある日3人の娘をもつ貧しい父親に出会います。そして、この父親には十分な嫁資がないため娘たちを結婚させることができずに困っていることを知ります。すると、聖ニコラウスは三夜続けて金の球をこの家の窓に投げ入れ、そのお陰で娘たちは売春婦にならずに済み、無事に結婚することができたという伝説です。この言い伝えにより聖ニコラウスが描かれる場合、本の上に三つの金の球(または石)を持っていることが多くあります。
また、もう1つの伝説では、ある亭主によってメッタ切りにされた3人の悪い生徒が聖ニコラウスによって再び生き返らされたと伝えられています。その後、聖ニコラウスはこの生徒たちを正すために宗教的な教育を行い、彼らが良い行いをするたびに小さなお菓子の褒美を与えました。この伝説により、聖ニコラウスは後に生徒や学生の守護神としても崇められるようになったといわれています。

 聖ニコラウスの実際の生涯は謎のままですが、その人物像はおそらく多くの善人が交わり合ってできたものではないかと推測されています。12月6日、聖ニコラウスが亡くなった日、聖ニコラウスは上記の2つの伝説に合わせて、良い子(生徒や学生たち)にプレゼントを持ってきてくれます。この「聖ニコラス祭」は今でもヨーロッパ各地でクリスマス前の行事として大変親しまれています。