イベント・お祭り
 

イベント・お祭

受け継がれ守られていく素朴な文化

美しいアルプスの山々と数多くの渓谷が続き、雄大な自然が広がるチロル。ハプスブルク帝国の最も重要な銀と岩塩をもたらす地として最盛期を迎え、一時は「ハプスブルク帝国のお財布」と呼ばれるほど繁栄したことで知られています。しかし、王族貴族が住んでいた比較的標高の低いインスブルックの都とは対照的に、アルプスの山岳地帯に住む農民たちの暮らしは決して楽なものとは言えませんでした。

総面積12.650k㎡のうち88%がアルプスの標高の高い山々で占められるチロルでは、人々は標高の高さと冬の寒さを凌いで孤立同然で自給自足の生活をしていました。そのため、チロルの渓谷では谷ごとに独自の文化や風習、方言などが誕生したのです。厳しくて過酷なアルプスの中で暮らすことは決して容易ではありませんでした。そんな中、貧しい農民達にとって唯一の心の支えとなったのがキリスト教でした。

長い間孤立していた山岳地帯の村々も、やがて19世紀初頭に入るとチロル全土で近代的な交通網が発達し始め、アルプスの町村が鉄道や道路などで結ばれるようになりました。これとほぼ同時期に新たなスポーツとして登山やスキーブームが世界中に広まり、チロルはその美しく豊かな自然環境によって一転して人気の高い旅行先となったのです。その後もリフトの建設や機械技術の発達により徐々に農民達の仕事の負担は軽減され、現代では当時のような貧しく厳しい山岳生活を送っている人々は殆どいません。しかし今でもチロルの人々の中には長年過酷な自然と共存して来た証として、「アルプス民族の精神」が強く息づいています。それは、人々が何事に対しても簡単に挫けないことや、村人達の団結力、家族への愛、伝統の継承、自然を愛する心、環境保護への取り組み、そしてキリストへの感謝の気持ちなどに表れています。過酷な山岳生活の支えとなったキリスト教は、今なおチロルの人々によって厚く信仰されており、現在でも人口約67万人の内90%以上がカトリック教徒と言われます。