シュトゥーバイタール鉄道
 

シュトゥーバイタール鉄道の旅

チロルで最も美しい渓谷の一つと言われ、アルプスの雄大な景色が広がるシュトゥーバイタール渓谷。東西に32kmも続くこの渓谷を、約100年の歴史を誇るシュトゥーバイタール鉄道が走っています。チロルの州都インスブルックから、シュトゥーバイタール渓谷の代表的な村、フルプメスまでは約18km、かわいらしい3両編成の列車で1時間ほどの道のりです。美しいアルプスの山間を抜けていく、小さな旅の楽しみをここでご紹介しましょう。

旅のスタートはインスブルック中央駅から。買い物袋を下げた地元の人が多数乗り降りする姿は、通常の路面電車と何ら変わりありません。列車は凱旋門を通り過ぎ、歴史あるインスブルックの街中を軽やかに走り抜けて行きます。出発してから20分ほどで、街外れの小さな踏切の前に到着、列車は小休止します。実はこれが、路面電車が登山電車に変身する合図なのです。

一息ついた列車は、インスブルックの街を右に見下ろしながら、ぐんぐんと山を上って行きます。街の背後にそびえるノルトケッテの姿には、きっと圧倒されることでしょう。石造りの古いトンネルを抜けると、今度は左手に緑の草原が広がり、その向こうにインスブルックの街が見渡せます。列車はゆっくりと蛇行しながら進み、最初の駅に到着。ふと振り返ると、生い茂る木々の間から頭を出した、ベルクイーゼルのオリンピック・スキージャンプ台が目に入ります。この駅で、フルプメスからやって来る対向列車を待ちます。

ここからは、シュトゥーバイタールの谷を左手に見下ろしながら進んでいきます。次の停車駅はナッタース。駅舎がかわいらしいのも、チロルならではでしょう。列車は立ち並ぶ家の合間を、縫うように走って行きます。上り坂が続き、正面にパッチャーコーフェルの山が見えて来ると、次の村、ムッタースに到着。赤いとんがり屋根の教会が見え、辺りには一面のお花畑が広がり、のんびりと草を食む牛の姿も見えます。心が和む風景が続いた後、列車は森を抜け、再びトンネルに入ります。トンネルの次に待っているのは、なんと鉄橋。かなりの高さがありますが、もちろん列車はすいすいと走っていきます。

左手には村、右手には深い緑の森。バルコニーに花を飾ったチロルらしい家を眺めていると、手入れの行き届いた広い庭で、ガーデンパーティーが行われていることがあります。アルプスの自然の中での暮らしがうらやましくなる瞬間です。そんな地元の人に、列車の運転手さんが警笛で合図を送る光景を目にすることも。この列車が、住民の生活の足として愛されていることが分かります。そのうち左に、深い谷が見えてきます。谷にかかる、車の行き交う高架橋が、ヨーロッパ橋。この道は、遥かイタリアへと続いて行きます。


列車は、谷川をまたぐ二つ目の鉄橋を渡ります。この鉄橋もなかなかの高さがあり、ちょっとしたスリルを味わえます。線路際には小さな花が咲き、地元の人が楽しむハイキングコースが続いています。森と草原の合間には小さな村。次の村はどんな村かとわくわくしているうちに、牧草地が多く目に付くようになってくると、終点はもう間近。放牧されている馬や牛の姿を横目に、列車はゆっくりと終着駅、フルプメスに到着します。

このまま列車に乗ってどこまでも、チロルの素朴な風景を眺めていたい・・・そう思えてしまう、あっという間の約1時間の旅です。

フルプメスの街からはバスに乗ってノイシュティフトの街に行き、ハイキングを楽しんだり、夏でもスキーのできるシュトゥーバイタール氷河スキー場に行ったりすることもできます。

インスブルックから気軽に楽しめる、アルプスの小さな列車の旅をどうぞ。あなただけの発見があるかもしれません。